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　B型、C型といったウイルスや、大量の飲酒が原因で肝炎になることはよく知られています。
　　しかし、国内の肝炎患者で最も多いのは、飲酒量が多くない人に起きる「非アルコール性脂肪肝炎（ NASH〈ナッシュ〉 ）」であることはあまり知られていません。
　推定患者数は約400万人に上ります。


　大阪府済生会吹田病院（大阪府吹田市）は、肝臓病研究では国内の第一人者で院長の 岡上（おかのうえ）武（69）が中心となって、NASHの先進的な治療や研究に取り組んでいます。
　NASHの存在は、米国では、30年以上前から報告されています。それまでは、肝臓に過剰な中性脂肪がたまって起きる脂肪肝炎になるのは大量に飲酒する人だけと考えられてきました。


　全く飲まない人や、飲んでも1日にビール中瓶（500ミリ・リットル）1本以下の人でも、脂肪肝炎になることが明らかになり、米国の医師が、非アルコール性脂肪肝炎を表す英語（non‐alcoholic　steatohepatitis）の頭文字を取ってNASHと名付けました。
　
　2007年まで京都府立医科大教授として肝臓病の研究をしてきた岡上は、2000年代に入ってから「日本でも、NASHはいずれ大きな問題になると確信していた」という。
　NASHの大半は、肥満や高血圧、糖尿病といった生活習慣病に起因していることが米国の調査でわかっています。


　食生活の欧米化が定着した日本でNASHの患者が増えてくるのは必然だと考えたからです。
　岡上は、厚生労働省が08年に発足させたNASH研究班の班長になり、実態の解明や遺伝子解析などの研究を主導。大学退職後、院長として赴任した同病院には、関西一円のほか四国や九州からも患者が集まり、全国最多の約600人のNASHやその予備軍の脂肪肝患者を診ています。


　京都府長岡京市の歯科医の男性（71）は昨年11月、心臓の画像診断を受けた際、偶然、肝臓の一部に異常な膨らみが見つかり、岡上にNASHが進行してできたがんと診断されました。2か月後に肝臓の約3分の2を摘出する手術を受けました。
　男性は30代の頃、運動不足などによる軽い脂肪肝だと指摘されたことがありましたが、身長175センチ、体重73キロで肥満ではなく、酒もたしなむ程度でした。肝機能などを示すAST（GOT）やALT（GPT）の数値もほぼ正常値でした。
　現在は、仕事に復帰している男性は、「自分が肝炎、肝臓がんになるなんて思いもよらなかった。『まさか』の連続だった」と振り返ります。


　肝臓は、病気が進行してもほとんど症状が出ないことから、「沈黙の臓器」と呼ばれます。このため、かなり悪化してから病気に気づくケースも多いのです。

　NASHかどうかは、専門医による血液検査や超音波検査で大体分かるが、詳細を知るには、局所麻酔で右の脇腹から針を刺し、肝臓組織を採取することが必要になります。
　NASHと診断されれば、原因となる生活習慣病の改善を目指し、服薬や運動療法、食事療法を行うのが一般的です。


　肝臓に鉄分が多く蓄積しているなら、鉄分による肝炎の進行を抑えるため、血液を抜く治療を行うこともあります。

　現在、NASHそのものの特効薬はありませんが、昨年11月から進行を防ぐ新薬の治験が同病院を中心に、全国約80施設で始まっている。4～5年先の実用化に向けて期待が高まっています。
　岡上は「早期発見すれば進行を防ぎやすいが、自覚のないまま見過ごされることが多い。生活習慣病の人は、一度は専門医の診察を受けてほしい」と話しています。


■ 酒飲まないのに…生活習慣病原因で脂肪肝炎400万人 － Yahoo ニュース